東京高等裁判所 昭和51年(う)2539号 判決 1978年5月16日
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役三月に処する。
この裁判が確定した日から一年間右の刑の執行を猶予する。
原審及び当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人森本脩提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるから、これを引用する。
一 控訴趣意中、理由不備等の主張について
所論は、まず、原審訴訟手続で原判示のハマダ吸圧器と称せられる器具(以下「本件吸圧器」という。)の吸引力の強さにつき検察側の立証が何らなかつたばかりか、釈明や鑑定も行われなかつたのに、原判決は、本件吸圧器は従来の伝統的民間療法であるアルコール方式に比べ格段に強い吸引力があると判示しているところ、原判決には右判断の理由が示されていないから、この点において原判決には理由の不備があると主張するので、一件記録を精査検討してみると、原判決は弁護人の主張に対する判断として、本件吸圧器は、コツプの中でアルコールを燃焼させると同時にこれを皮膚に当てる伝統的民間療法に比べて、吸引力が格段に強いと説示しているところ、原判決挙示の各証拠によれば、本件吸圧器は、もともと浄血療法すなわち非観血法に用いられることを本来の目的として製造された器具で、瀉血ないし放血による治療すなわち観血法への使用を予定して製造された器具ではなく、従つて、観血法に使用されることを予定している他の吸圧器、ことに、黒岩東吾が考案した黒岩式吸圧器に比べると吸引力が弱く、構造も比較的簡単ではあるけれども、プラスチツク製吸角を体表に密着させ、手動式でこそあれ、ポンプの力によつて右吸角内の気圧を低下させるという仕組になつていることが認められ、以上の事実関係に照らすと、本件吸圧器は、原判決のいう伝統的民間療法に比べて吸引力が格段に強いことを優に肯認することができる。
次に、所論は、原審訴訟手続で本件吸圧器の人体に対する危険性につき鑑定等の証拠調が全く行われなかつたのに、原判決は、単に押収してある解説書(吸圧療法の研究)一冊(東京高裁昭和五一年押第九八六号の一)の記載内容、しかもその曲解によつて、本件吸圧器は人体に対し危険性があると判示しているところ、右解説書は被告人が著わした小冊子で、実質的には証拠にならない証拠であり、従つて、原判決には右判断の理由が示されていないにひとしいから、この点において原判決には理由の不備があると主張するので、一件記録を精査検討してみると、原判決は弁護人の主張に対する判断として、本件吸圧器は、その人体に及ぼす影響が大きく、用い方によつては、人体に悪い作用を及ぼす危険が十分にあると説示しているところ、右判断の根拠の一つとして原判決が挙示している前記解説書一冊は、被告人がこれを著わしたものであることは所論指摘のとおりであり、原審訴訟手続で証拠物たる書面として、異議なく、適法な証拠調を経た証拠であり、従つて、罪となるべき事実の認定の一資料となり得る証拠能力のみならず証拠価値をも備えているものであると考えられるところ、右解説書一冊を含む原判決挙示の各証拠によると、本件吸圧器は、前記のとおりプラスチツク製吸角を体表に密着させ手動式ポンプで右吸角内の気圧を低下させるものであるが、それによつて皮膚の一部を数箇所盛り上がらせ、身体の表面に血液を吸い寄せて浄血作用、更には、皮下溢血を生ぜしめるもので、その結果、体表部における血液循環や体内深部における血液流動、これによる新陳代謝、血液のペーハー度、交感神経や背椎神経の機能、内臓の活動力、神経細胞の機能、下熱作用及び発汗作用等に影響を与え、これによつて、高血圧、動脈硬化症及び心臓病等の循環器疾患、胃腸カタル及び胃酸過多症等の消化器疾患、こしけ及び月経過多症等の婦人科疾患、並びに、神経痛等の骨関節疾患等に特効をもたらし、従つて、人体に大きな影響を及ぼすものであるが、かかる影響力のあることから、逆に、被施用者の身体的条件並びに使用方法すなわち使用の時期、回数及び継続時間等のいかんによつては、人体に悪い作用を及ぼす危険が十分にあることが認められるのみならず、前記解説書中に掲記されている吸圧療法に関する諸家の推奨文の中に「瀉血によつて造血器管を刺戟するから血液の再生療法となる。」との一文に代表される同趣旨の効能書きが散見されることのほか、右解説書中の注意書の中に「塵など異物がつかえたり、付着して空気が漏れる場合は、吸角(吸玉)を逆さまにして食器野菜洗浄用の洗剤液を入れ、弁の尖端を押し下げて吸角をふり、洗剤液を弁内部に入れて洗滌し塵を排出して下さい。あと水を注いで洗滌液をよく洗い流して下さい。水洗が不十分だと残つた洗剤成分のため弁のゴムが粘つて故障の原因になりますから、水洗は十分にして下さい。」と記載されていて、これによれば、瀉血に使用されることを予定しその洗滌方法について説明したものと解されること、本件吸圧器の販売に当たつては、一セツトに右解説書が一冊ずつ添えられていたことが明らかであり、従つて、本件吸圧器の製造者である被告人の当面の意図いかんにかかわらず、本件吸圧器を購入した者が本件吸圧器を瀉血すなわち観血法に用いることがあり得るし、又、その場合でも本件吸圧器はその構造からして十分その用にたえうるものと認められ、右認定事実に照らすと、本件吸圧器は人体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている器具器械であつて、用法のいかんによつては人の健康に害を及ぼす虞のあるものに当たることを優に肯認することができる。所論が引用する昭和三五年一月二七日最高裁判所判例は事案を異にし本件に適切でない。
以上の理由により、原判決には所論のような理由不備はなく、違憲の主張は前提を欠き、論旨は理由がない。
二 控訴趣意中、事実誤認及び法令適用の誤りの主張について
1 所論は、まず、本件吸圧器は、古来非観血法として行われて来た民間療法、すなわち、すいふくべ若しくは吸角と称せられている器具を使用する方式、又は、コツプの中でアルコールを燃焼させると同時にこれを皮膚に当てる方式に改良を加え、簡単、便利、かつ、安全にしたもので、空気止めのための特殊弁すなわち真空バルブを吸角に取り付け、直径や容量が通常のコツプに比し小さい右吸角を体表に密着させ、右吸角内の気圧を手動ポンプの力によつて低下させるようにしたものに過ぎず、そのため、その吸引力はせいぜい四五水銀柱センチメートルで、しかも、これが非持続的であり、従つて、本件吸圧器は、もつぱら、非観血法、すなわち、局所刺戟に期待し身体表面に血液を吸い寄せて局所の自然防衛作用を増強する方法にのみ使用され得るものに過ぎず、瀉血ないし放血による治療すなわち観血法に使用され得ない構造になつている器具であるから、特別な専門的知識のない一般通常人が家庭で手軽に使用する一般家庭用品にほかならず、しかも、本件吸圧器の使用は、人の健康にとつて安全かつ有効でこそあれ、人の疾病の治療若しくは予防に使用されたり、又は、人の身体の構造若しくは機能に悪影響を及ぼしたりする器具器械ではない。ところで薬事法一二条一項所定の医療用具としての医療用吸引器(同法二条四項、薬事法施行令別表第一器具器械三二)とは、動力装置により高度の低圧を吸引器内に持続的に保持させ、これによる吸引作用をもつぱら瀉血ないし放血等の処置、すなわち、医療行為としての手術に利用する器具、換言すれば、分娩用吸引器や医療用低圧持続吸引器等に類する器具で、かつ、もつぱら、医療機関ないし医療関係者が使用するものであることを要するのみならず、人体ないし健康に害を及ぼす危険ないし虞があるものに限られ、一般通常人向けの家庭用品はこれから除外されていると解すべきであるから、本件吸圧器は右医療用具たる医療用吸引器には該当しないにもかかわらず、原判決は本件吸圧器が薬事法一二条一項所定の医療用具(前記医療用吸引器)に当たると判示しているので、この点において原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認又は法令適用の誤りがあると主張する。そこで考えるに、古来「すいふくべ」「吸角」などと呼ばれてきた民間療法は、所論の非観血法としてだけでなく事前に皮膚に傷をつけて血や膿を吸いとる観血法としても行われてきたことも公知の事実であるが、一件記録を精査検討してみると、原審で取り調べられた各証拠によれば、本件吸圧器はプラスチツク製吸角を体表に密着させ手動ポンプの力によつて右吸角内の気圧を低下させるもので、これだけでも右吸角内の気圧は相当減圧され、しかもこの減圧が可成の時間持続されるものと考えられるが、更に、前記解説書において、治療専業家のみならず一般通常人に対しても、本件吸圧器に日立分相六五Wモーターを取り付けることを奨めているところ、これを取り付けた場合本件吸圧器は、真空度六〇ないし七〇という強大な真空度(ただし、調節により吸引力を弱めることもできる。)が長時間持続されることが認められ、当審における事実の取調べの結果によつても、右認定を覆えすに足る資料はなく、かえつて、当審における鑑定の結果、すなわち、警察庁技官阿部修一作成の鑑定書及び医師山下九三夫作成の「浜田式吸角器による吸角療法の局所および全身に及ぼす影響について」と題する書面によると、本件吸圧器は吸角を皮膚に当て手動ポンプの力によつて右吸角内の気圧を低下させた場合ですら、五〇水銀柱センチメートル以上の減圧が得られ、これが数分間持続していることが明らかであり、又、証人村田浩の当審公判廷における供述によると、本件吸圧器は吸角の直径や容量が小さいため、かえつて、相当大きな減圧が簡単に、かつ、短時間で得られることが明らかである。次に、本件吸引器で非観血法を行う場合における人体への影響について、一件記録を精査検討してみると、原審で取り調べられた各証拠によれば、本件吸圧器は、体表に密着させた吸角内の気圧を前記のとおり五〇水銀柱センチメートル以上も減圧させて皮膚の一部を数箇所盛り上がらせ、よつて浄血作用や皮下溢血を発生させ、その結果、血液の流動や循環を促進するとか交感神経等の機能及び発汗作用等に影響を与え、これにより循環器や消化器等の疾患に効果をもたらし、もつて、人体の構造もしくは機能に影響を及ぼすものであるが、それだけに被施用者の身体的条件や使用方法すなわち使用の時期、回数及び継続時間のいかんによつては、人の健康に害を及ぼす虞があることが認められ、当審における鑑定の結果、すなわち医師山下九三夫作成の前掲書面によつても、本件吸圧器の吸角を皮膚に当て、右吸角内の気圧を低下させた場合、減圧度が五〇水銀柱センチメートルで、その部分の皮膚が相当盛り上がり、可成強度の皮下溢血(毛細血管からの出血)を起こし、これによる発赤は、右吸角を皮膚から外した後も可成の時間残存していることが明らかであるから、当審における事実の取調べの結果の中、前記認定に反する部分、すなわち医師山下九三夫作成の前記書面と証人山下九三夫の当審公判廷における供述とのうち、本件吸圧器は非観血法に用いられている限り人の健康に害を及ぼす虞がない旨の供述によつても、前記認定を覆えすことはできず、他に右認定を動かすに足る資料はない。
更に、本件吸圧器を観血法に使用することについて、一件記録を精査検討してみると、原審で取り調べられた各証拠、ことに前記解説書によれば、本件吸圧器は製造者である被告人の当面の意図いかんにかかわらず、本件吸圧器を購入した者が本件吸圧器を用いて観血法を行うことがあり得るのであり、その場合でも本件吸圧器はその構造からして十分その用にたえうるものと認められ、当審における事実の取調べの結果によつても右認定を覆えすことはできず、かえつて、証人山下九三夫及び同村田浩の当審公判廷における各供述によると、本件吸圧器で観血法を行うことは可能であり、その場合、吸角の吸出孔、真空バルブ、ガイド及びスプリング並びにその付近に付着ないし貯溜した血液は前記解説書に指示されているような方法でこれを洗い落とし、右吸角を再び使用することも可能であることが明らかである。
ところで、本件吸圧器は、前段説示のとおりの強度と持続性のある吸引力で吸角を体表に密着させ、それによつて非観血法更には観血法をも行い得る吸圧器であることが客観的に認められる以上、すなわち人体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが可能で、したがつて人の健康に害を及ぼす虞があると客観的に認められる以上、たとえそれを特別な専門的知識のない一般通常人が家庭で手軽に使用するものであり、又、製造者の当面の意図が非観血法に使用することを期待したとしても、薬事法一二条一項が製造許可の対象としている医療用具としての医療用吸引器に当たると解すべきである。
2 次に、所論は、被告人は本件吸圧器が薬事法一二条一項所定の医療用具には当たらないと思い込んでいたし、被告人がかように考えていたについては相当な理由があつたと認められるにもかかわらず、原判決は、被告人は本件吸圧器が薬事法一二条一項所定の医療用具に当たるのではないかとの認識を有し、少くとも、被告人が本件吸圧器は右医療用具に該当しないと考えるにつき相当な理由がなかつたと判示しているので、この点において原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があると主張する。そこで一件記録を精査検討してみると、原審で取り調べられた各証拠によれば、被告人は昭和二四年ころ山梨県衛生部医薬課係官から、本件吸圧器はあんま器類似の器具であるから、その製造や販売について旧薬事法(昭和二三年法律第一九七号)による届出をするには及ばないと云い聞かされたので、そのまま本件吸圧器の製造、販売及び改良を続けていたところ、本件吸圧器と同様の原理に基づき、基本的には同様の構造を備えている吸圧器を考案した黒岩東吾が、昭和四一年ころ右吸圧器の製造につき薬事法一二条所定の許可を受け、これを聞き知つた被告人は、念のためとはいえ、再び山梨県衛生部医薬課を訪れ、薬事法一二条所定の許可の申請手続につき係官から説明を受け、本件吸圧器の部品を作つている村田浩(大浩医療器製作所)に右申請手続の代行を依頼したが、この許可がないまま現在に至り、その間被告人は原判示のとおり昭和四九年九月初旬ころから本件吸圧器の製造や販売を行い、更に、右販売に際し、本件吸圧器一セツトに一冊ずつ前記解説書を添え、その中に、本件吸圧器の医薬用具製作承認番号として、「玉用一七・大浩医療器製作所」という村田浩の承認番号を記載し、かつ、本件吸圧器の販売につき甲府保健所に届出をした事実が明らかであり、右事実に照らすと、たとえ黒岩東吾が許可を受けた前記吸圧器が本件吸圧器に比べ、吸角の口径や容量が大きく、吸引力が強大で持続性が長いこととか、これまで本件吸圧器の製造や販売につき関係行政庁から被告人に対する行政指導が何らなかつたこととかの事情があるにもせよ、被告人としては、原判示のとおり本件吸圧器の製造や販売をするに際し、本件吸圧器が薬事法一二条一項所定の医療用具に該当するのではないかとの認識を抱いていたものと推認され、当審における事実の取調べの結果によつても右認定を覆えすに足る資料はない。
3 以上の理由により、本件吸圧器は、人体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている器具であり、かつ、人の健康に害を及ぼす虞のあるものであつて、薬事法施行令別表第一器具器械三二所定の医療用吸引器に当たり、被告人も原判示の製造及び販売に際し本件吸圧器が薬事法一二条一項所定の医療用具に該当することについて未必の故意を有していたものであることが、原審で取り調べられた各証拠によつて優に肯認され、当審における事実の取調べの結果によつても右認定を覆えすことはできず、従つて、これと同旨の事実関係を認めた原判決の認定は相当であり、又、本件吸圧器が薬事法一二条一項所定の医療用具に当たるとした原判決の判断も正当であるから、原判決には所論のような事実の誤認や法令適用の誤りはなく、論旨は理由がない。
三 控訴趣意中、量刑不当の主張について
所論は、懲役と罰金とを併科した原判決の量刑は重過ぎるというので、一件記録を精査検討してみると、被告人は原判示のとおり、昭和四九年九月初旬ころから昭和五〇年一二月七日ころまでの長期間にわたり、無許可で本件吸圧器を製造したもので、その量は計四九一セツトに達し、これをすべて、昭和四九年九月一三日ころから昭和五〇年一二月七日ころまでの長期間に、前後八一回にわたつて売りつくし、その売上高は計五二一万円余に達し、従つて、被告人は本件犯行により相当の利益を上げたと認められ、薬事法の趣旨すなわち国民の保健衛生の確保という面を考慮すると、犯情は決して軽くなく、被告人を懲役三月及び罰金二〇万円に処し、右懲役刑についてのみ一年間刑の執行を猶予した原判決の量刑もあながち首肯できないではないが、本件吸圧器は、それが人の健康に害を及ぼす虞が比較的小さいこと、被告人には本件吸圧器の製造や販売につき許可を要するのではないかと思つていたけれども、これは未必的なものにとどまり、しかも前述のとおり、製造許可を得るために努力したけれども、この申請手続においては、申請書に、権威ある機関における理論的効果についての研究業績及び大学病院又は権威ある総合病院の臨床成績(これは、一適応症につき二以上の病院において集められた一病院当たり少なくとも三〇例について、形式、内容とも、学会で発表できるように作成されたもの)を添付させること等が昭和三六年七月八日厚生省薬務局長から各都道府県知事に発せられた通達(薬発第二八一号)によつて要求されているため、本件吸圧器の製造の許可を受けることは事実上不可能であつたといわざるを得ず、しかも、本件吸圧器の製造や販売につき被告人に対し前記のとおり何ら行政指導が行われなかつたこと、被告人は相当高令者であるがこれまで前科はもちろん犯罪歴が一切見当たらないこと並びに被告人はもはや本件吸圧器の製造や販売を中止し、これを再開しようとは考えていないと認められることなど、被告人に有利な、又は同情すべき諸事情をしんしやくすると、被告人に対し罰金と懲役とを併科するのは、たとえ懲役刑について刑の執行を猶予するにもせよ、相当でないと判断され、原判決の量刑は重過ぎて不当であるというべきであり、論旨は理由がある。
よつて、刑訴法三九七条一項、三八一条によつて原判決を破棄し、同法四〇〇条但書によつて当裁判所において更に次のとおり自判する。
原判決が確定した事実は原判決挙示の各法条に該当するところ、原判示第一と第二との各所為について、いずれもその所定刑中懲役刑を選択し、右各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い原判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役三月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判が確定した日から一年間右の刑の執行を猶予することとし、原審及び当審における訴訟費用の負担について刑訴法一八一条一項本文を適用した上、主文のとおり判決をする。